生活を大事にするということ【紅葉の作業療法士】

①「できない」から始まるリハビリ

脳卒中で左半身が麻痺した70代の男性患者は、リハビリに消極的だった。口癖は「もうダメだ」「できるわけがない」。凪人は、彼の過去の趣味が釣りであったことを知り、右手だけで糸を結ぶ練習を提案した。最初は乗り気ではなかった患者も、次第に「できるようになりたい」と思うようになり、麻痺した手で少しずつ竿を支えられるようになった。退院の日、「先生、俺、また釣りに行けるかな?」と期待に満ちた笑顔を見せた。


②生活のリズムを取り戻すことが、リハビリ

認知症の初期症状がある80代の女性は、病院での生活に馴染めず、リハビリへの意欲も低かった。凪人は彼女の日常生活のルーティンを知るために話を聞き、毎朝お茶を淹れることが習慣だったと気づく。そこで、リハビリの一環として「お茶を淹れる動作」を訓練に取り入れた。毎朝、自分で茶葉を用意し、湯を注ぐ。それだけのことだったが、女性の表情は日に日に穏やかになっていった。「病院でも、私の生活は続いているんですね」と微笑んだ彼女の姿に、凪人は作業療法士としての意義を改めて感じた。


③孫のために、もう一度針を持つ

脳出血で入院した65歳の女性は、和裁が得意だったが、「もう手が動かないから無理」と諦めていた。凪人は、彼女が普段どんなものを縫っていたのかを尋ねた。すると、「孫のために浴衣を縫っていた」と話す。そこで、少しずつ針を持つ練習を始めた。最初は布をつまむだけだったが、数週間後にはゆっくりと針を動かせるようになり、小さな巾着袋を完成させた。「次は、孫の浴衣に挑戦する」と目を輝かせる彼女の姿に、凪人は作業療法の本質を感じた。


④「手伝いすぎない」ことの大切さ

50代の男性患者が脳梗塞で左半身の動きが悪くなり、食事の際も家族がすべて手伝っていた。「迷惑かけたくない」という思いから、自分で動かそうとしない彼に、凪人はあえて最小限のサポートしかしなかった。スプーンを口に運ぶのに時間がかかっても、じっと待った。何度もこぼしながら、患者はついに自力で一口食べた。「できたじゃないですか」と声をかけると、彼は少し恥ずかしそうに「本当は自分で食べたかったんだ」と言った。サポートすることだけがリハビリではない。時には「手伝いすぎないこと」が、患者の自立を支えるのだと凪人は実感した。


⑤「働くこと」だけが人の価値ではない

仕事人間だった60代の男性が、脳卒中の後遺症で片麻痺となり、退職を余儀なくされた。「もう俺には価値がない」と落ち込む彼に、凪人は「仕事だけが人の価値ではないですよ」と伝えた。しかし、彼の心には響かないようだった。ある日、リハビリ中に彼が昔、地域の子どもたちに将棋を教えていたことを知る。「今でも、将棋は指せますよね?」と凪人が持ちかけると、彼は最初こそ戸惑っていたが、実際に指し始めると顔つきが変わった。「先生、俺、まだ何かできるかな?」そう呟く彼に、凪人は「もちろんです」と答えた。人の価値は、働くことだけで決まるわけではない。


まとめ

凪人は、患者一人ひとりの生活や価値観に寄り添いながら、ただ機能回復を目指すだけでなく、「その人らしい生活」を取り戻すためのリハビリを行っている。リハビリとは、単なる運動や訓練ではなく、「その人が自分らしく生きるためのサポート」であると、彼は日々実感している。

調理訓練【紅葉の作業療法士】

調理訓練

対象の患者さんは49歳の主婦の方だった。


視床出血で左片麻痺の後遺症が残っていた。


まだ中学生の子供がいて、特に料理の家事をしなければならない。


歩行訓練や日常生活動作訓練を経て、退院が見えてきたとき、調理訓練をすることになった。

 

評価することは多くある。


立位バランス、立位耐久性、上肢機能、巧緻性といった身体機能面の評価。

注意耐久性、遂行機能、ワーキングメモリといった高次脳機能面の評価。

 

現状を評価し、訓練で対応できそうな部分は今後の訓練計画に反映させる。

予後を予測しつつ、訓練で対応が難しそうであれば自助具の使用など適応モデルを選択する。

 

そうやって、クライアントとその家族の生活を再構築する作業に伴走し、支えることには強いやりがいを感じる。

 

出来上がったサラダのドレッシングは絶品だったが味付けは濃いめだった。

 

塩分多めの味付けの習慣が高血圧の原因になっていたのかもしれない。

 

「塩分を少なめに」と言うのは簡単だが、料理の味付けというのは楽しみと直結するところでもあり、なかなか変えられないものなのかもしれない。

意思決定支援【紅葉の作業療法士】

理学療法士は歩行の専門家であるが、作業療法士は何の専門家であるかと問われた場合、作業療法士は従来、高次脳機能障害、上肢機能、日常生活動作を専門としてきた。


しかし近年では「作業」の専門家である、という概念が提唱されるようになった。


人間は「何か」をして生きており、その「何か」が滞りなければ、誰にも何も相談しない。
しかし、何かの不具合が生じ、それを他者に相談したとき、それは問題として顕在化し、解決が必要な対象となる。


作業療法は、その問題を解決し、不快感なく人生を遂行できるように支援する役割を持っており、そのために作業的平衡状態に持っていくことを目指す。


これを達成するためのプロセスとしては、まず相手が十分な情報を持っていない場合に関連するデータや事実を提供し、より informed(十分な情報を得た)決断ができるようにすること、また相手の状況を理解し、専門的な知識や経験を基にアドバイスを行い、選択肢を明確にし、リスクやメリットを考慮させることが含まれる。


さらに、様々な選択肢を提示し、それぞれの利点や欠点を説明することで、相手が自分に最適な選択を見つけやすくし、ディスカッションを通じて思考の整理を助け、決断の質を高めるサポートを行うことも重要である。


また、決断後の実行を手助けするためにリソースやサポートを提供することも、意思決定支援の一環として含まれる。意思決定を支援するということは、相手の決断を尊重しながら、そのプロセスをスムーズにするための助け舟を出すような役割であり、最終的な決定は相手に委ねつつも、その過程で支えになることが重要である。

紅葉の作業療法士

一条凪人

もともと、夜型だった。


作業療法士になって4年。


やりがいを持って働いていたけど、
どこかで常に体の不調を感じながら働いていた。

 

特に午前の申し送りは頭が働かなくて辛かった。

 

人を支援する仕事はしたい。
でも、自分にとってコンディションが良い時間に人を支援したい。

 

 

 

だから、起業した。

夏山と星空【Alteration】

リュカとアダムは夏の山をナイトハイキングをしている。

 

ヘッドライトに照らされた道を歩きながら、アダムはリュカに問いかける。

 

「君は時間を移動することが可能になることの意味を考えたことはあるかい?」

 

リュカは少し考えたが、質問の真意がわからず

「どういうこと?」と聞き返した。

 

アダムはふっと夜空を見上げて語り出した。

 

「人生のどうしようもない後悔を持っている人にとって、時間を巻き戻せないことは時として救いになることがある。

時間を巻き戻せないから、前に進むしか無い。そうやって足を前に進めることができることだってあるんだ。

 

そんなどうしようもない後悔を前にして、もしも過去に戻る手段が存在するとしたら?

 

気持ちを切り替えられず、絶望に抗えない人だっているだろう。

そのことについて、何か感じることはあるのかと思ったんだ。」

 

 

リュカは歩きながら少し黙考した後に答える。

 

 

「時間軸は単一の物だ。それにタイムマシンを実行できる回数も有限である以上、全ての人が時間を改変する権利を享受できるわけじゃない。

それでも、人類単位での大きな危機に対応できる手段を得られることは、個人にとっての救いにはならなくても多くの命を救える可能性があると思う。

 

どうか、一人ひとりが過去が改変できる世界で前向きに生きて欲しいと願うよ。」

 

 

アダムは穏やかな瞳でリュカの目を見て答える。

 

「君らしいな。

君が関心を持った研究対象は、これまで人間が誰も創り上げることができなかったものだ。

たまたまそれを実現できる能力を君が有していた。

必ずしもその影響が個々人にとってポジティブな物にならなかったとしても、

君は君の心が促すままに、熱意を持って取り組むといい。」

 

静かに、しかし力強く話すアダムの言葉に、リュカは心に火が灯る思いがした。

 

トレッキングブーツが砂利を踏み締める音が静かに響く中、

歩みを進める二人の上には澄んだ夜空に満天の星が瞬いていた。

アダム・ハヴェル【Alteration】

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Adam Havel(アダム ハヴェル)

チェコ人の青年でリュカの親友。

大学院で出会い、共にCERN(欧州原子核研究機構)に就職する。

 

人間性:

• 知識欲旺盛: 常に新しいことを学びたいという欲求が強く、特に物理学と数学に対する情熱を持ってる。

冷静沈着: 問題解決において冷静に対処し、感情に流されることなく論理的に考えることが得意。

社交的: リュカとは特に親しい友人関係にあり、同僚たちとも積極的にコミュニケーションを取る姿勢を持っている。

責任感が強い: プロジェクトに対して非常に真剣に取り組み、自分の役割をしっかりと果たそうとする。

 


取り組んできたスポーツ:

バスケットボール: 大学時代から続けており、リーダーシップを発揮するポジションに就くことが多かった。

ランニング: 日常的に行っており、ストレス発散や集中力を高めるために利用している。

 


趣味:

天文学: 空を見上げることが好きで、アマチュア天文学者として星の観察を楽しんでいる。

チェス: 論理的思考力を鍛えるために取り組んでおり、友人や同僚と対戦することが多い。

読書: 特に科学や歴史に関する本を好み、休暇中は読書に没頭することが多い。

 


好きな食べ物:

シュヴィーチコヴァー(Svíčková): チェコの伝統的な料理で、牛肉のクリームソース添え。これを家庭料理としても楽しむことが多い。

クネドリーキ(Knedlíky): チェコの伝統的なダンプリングで、肉料理やソース料理に添えられることが多い。

ビール: 特にチェコの地元ビールを好み、特別な日の乾杯には欠かせない。

 


好きな音楽:

クラシック音楽: 特にドヴォルザークスメタナなどのチェコの作曲家の作品を好み、コンサートにも足を運ぶことが多い。

ロック音楽: チェコのバンドや国際的なロックバンドも好んで聴く。

ジャズ: リラックスしたいときや作業中に流すことが多い。

 

まとめ:

アダム・ハヴェルは、深い知識と強い情熱を持つ科学者であり、論理的で冷静な性格が彼の研究に対するアプローチに表れている。

趣味やスポーツを通じてバランスの取れた生活を送り、リュカとの友情を大切にしながらCERNでの研究に励んでいる。

夜のオフィスとココア 【Alteration】

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タイムマシン開発プロジェクトのために与えられたオフィスで、リュカは夜半過ぎまで残っていた。

 


時間移動の精度を調整するために使用されるプロメチウムの出力値が、どうしても定まらない。

このままでは、いくつかの条件下で、時間の座標の正確な設定が困難であり、目標時間地点との大きな乖離が生じてしまう可能性がある。

 


数値を設定し、量子コンピュータを使用したシミュレーションを実施し、誤差を記録、新たな設定値を算出し、再度シミュレーションを実施する。

ひたすらに試行錯誤を繰り返す。

しかしどうしても安定する数値が見出せない。

 


2日、3日、、

時間だけが過ぎていく。

 


そんなある日の夜半のこと。

 


クロエ「まだ残ってるの?」

 


リュカ「時間移動の調整のためのプロメテウスの出力値が、どうしても定まらないんだ。。」

 


クロエ「全体のエネルギーを調整する重要な部分ね。責任の大きな研究だし、繊細な調整が必要なのでしょうけど、根を詰めすぎると大事な変化を見逃すわよ。」

 


振り返るリュカ

 


クロエ「実はハーシーズのココアがずっと好きなの。深い思考には糖分も必要でしょう?」

 


クロエから渡されるココアを受け取り、手で包み込むリュカ。

ココアの暖かさが心まで暖めてくれるようだった。